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ディドロの農業論 02 共和政期ローマ(村井明彦)
ディドロは、為政者でもあり農夫でもあったローマ人の例として、共和政期の2人の将軍を挙げている。セラヌス(レグルスとも)は、軍の指揮を任されたとき、種蒔きをしていた。キンキナトゥス(オハイオ州シンシナティの語源)は、独裁官となったとき、自分の土地を耕していたが、辞令で軍を率いて17日で勝利を収め、再び領地に戻って農夫となった。

共和政初期のローマのよき時代には、何ごとにつけても農業が高く評価されていた印である。ロクプレーテスlocupletes(富者)とは、フランス語では大ラブルール gros lableurs(富裕な借地農)と呼ばれるものと同様であった。最初の貨幣ペクーニア・ア・ペクゥ pecunia a pecu(「家畜の貨幣」を意味する)には羊か牛の刻印があった〔ちなみに、牛が貨幣である時代もあった〕。市民の最も高い階層は「ルスティカエ・トリブス rusticœ tribus」(田舎の名族)と呼ばれ、彼らにとって「トリブス・ウルバナーエ tribus urbanœ 」(都市の名族)になることは零落を意味した。カルタゴを攻略したローマがその図書館から救い出したのは、マゴの農書28冊のみであった。大カトーもキケロも農業を重視した。キケロはこう書いた。

企てたり求めたりできるすべてのもののうち、農業が最もよく、有益で、穏やかなものであり、自由な人間にとって最もふさわしい」(p.50)。

結局、ディドロの分析によれば、共和政ローマは地方に所領をもつ名族たちの寡頭支配として安定した社会をなしていたのである。製造業も金融業もさほど大きな地位を占めない古代の産業構造を考えると、基幹産業である農業の掌握が統治の要である。支配層は、「市民」と呼ばれるものの実は地方に所領を有する地主でもあった。

農業は法と社会とともに生まれた。それは土地の分割と同時に生じた。土地の収穫物が最初の富であった。人々は、さまざまの土地を移動して他人の幸不幸を知らせあうよりも、自分が占めている一片の土地で富を増すことに専念し、それ以外の富を知らなかった。だが、征服の精神が社会を強大にし、奢侈、商業、その他諸国民の栄華と悪意の顕著な印すべてを見出すと、たちまち金属が富の象徴となり、農業は最初もっていた名誉を失った。そして、下賎の者にゆだねられていた農村労働はかつての尊厳を詩人の歌の中に保存するのみとなった。腐敗時代の才人たちは、彫像と絵画に題材を与えた都市には何も見出さず、想像力によって農村に出入りしてかつての習俗を思い出させることを好んだが、これは自らの時代の習俗に対する厳しい風刺であった」(p.51)。

安定した農業的社会は、農耕に専門的に従事する層が生まれて富裕な市民が農業の徳を見失うと腐敗に突入した。ディドロはプリニウスの言葉を引いている。

土地は、かつては収穫物をたくさんもたらしていた。それは、いわば勝利をおさめた人々の手で飾られた犂で耕されることに喜びを感じていた。そして、この名誉に応えるために、それは力の及ぶ限りその産物を増やしていた。今日では最早そうではない。われわれは欲得ずくの借地農(フェルミエ)にそれをゆだね、また奴隷や罪人に耕作させている。土地がこの侮辱を不快に思ったのだと考えてみたくもなるだろう」(p.51)。

市民が戦士でも農夫でもある時代は終わり、土地の生産性は落ちたというのである。背景には、スコットランドの経済学者と同じ分業批判の視点がある。このような状態から、帝政期の農業の特質が生まれてくるのである。
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